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徘徊ドライブ
2016.11.25
父がたの祖母は、私が高校生の頃に亡くなりました。
和服の似合う、ほっそりと美しかった祖母が、晩年、いわゆる認知症になりました。あの頃は今のように施設もなく、認知症という言葉すら確立されておらず、それでも賢く優しかった祖母が、前後の脈絡なく暮らす様は、父には胸をかき乱されるほど辛かったのではと思います。
ある時祖母は、私や母が気づかぬ間に、よそ行きの着物を着て、ふっといなくなりました。探してもどこにも見当たらず、その時はすでに、祖父は亡くなり、私の家に共に暮らしていましたから、祖母が歩いて出掛ける友人も場所も無いのです。
夕暮れ前になって、母も私も、知らせを聞いて驚いた職場の父も途方に暮れ始めた頃、祖母はひょこっと帰ってきました。
「親切な人が、送ってきてくれましたわ。」
そう話していましたが、未だにそれが誰なのか、祖母がどこを歩いていたのか、天国で私が祖母に会うまでわかりません。
さて、先日のテレビで、今は徘徊は、歩くのではなく、ドライブなのだと言っていました。恐ろしいことだと、時代の流れを思いました。あの頃は、自転車や、徒歩がほとんどの時代。自分を忘れても、歩いているなら、他人を巻き込む大きな事故にはなりません。けれど、「さあ、仕事に行こうか」と、かつての自分になって、車に乗ったらどうでしょう?
もはや高齢になれば、誰にも起こりうることで、そしてまた悲しく辛い現象でもあります。
インサイトという、障害物を認識して自動制御する装置は、もう国の安全基準の必須のものとして、安価でどの車にも装着可能にしてほしいものです。そういうことに、是非税金を費やして欲しいものです。